酸化チタンの合成と光触媒反応

 酸化チタン(TiO2)では,光で励起された電子がTi4+を還元してTi3+とし,さらにこの電子が反応物に供与されて還元反応が,電子が抜けた穴(正孔)が相手から電子を奪って酸化反応が,同時に起こります。反応物質が水(H2O)である場合は,H+が還元されて吸着水素H(a)が,H2Oが酸化されてO2が生成します。ここに白金(Pt)などが存在すると,その助触媒効果でH2が生成します。この実験では,チタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)を加水分解して酸化チタンを作り,これを光触媒とし有機物(メチレンブルー)の分解反応を行います。

試薬・器具
チタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4
メチレンブルー(0.01 %メタノール溶液)
蒸留水
ビーカー,ガラス棒,ろ紙,ブフナーろう斗,吸引ビン,アスピレーターなど減圧できるもの,蒸発皿,るつぼばさみ,バーナー,三脚,金網(あるいは三角架),乳鉢,ブラックライト(20 W蛍光灯型),ピペット,洗びん

手順
酸化チタンの合成
(1) ビーカーに,水20 mlを用意する。
(2) ビーカーに,チタンテトライソプロポキシドを,ガラス棒で良くかき混ぜながら加える。白色の沈殿が生じる。
(3) 沈殿を,ブフナーろう斗を用いた吸引ろ過で集める。ビーカーに残った沈殿は,蒸留水で洗い流す。
(4) 沈殿を,ガラス棒で蒸発皿に移す。
(5) 蒸発皿をるつぼばさみで保持し,ガラス棒でかき混ぜながら加熱する。(から煎りの要領)
(6) 蒸発皿の底に直接触れている固体(試料の周辺部)がやや黄色味を帯びたら加熱を止める。冷えると黄色は消え,白色に戻る。
(7) 固体(酸化チタン)を乳鉢に移し,粉砕する。

光触媒反応
(1) 粉砕した固体の一部を,蒸発皿に取る。
(2) メチレンブルー溶液を1〜2 ml,ピペットで加える。(懸濁液とする)
(3) ブラックライトで紫外線を照射し,変化を観察する。

解説
 Ti(OCH(CH3)2)4は反応性が高く,水とは瞬時に反応し酸化チタンゲルを生成します。これを加熱して水分を除き,酸化チタンとします。
 メチレンブルーのメタノール溶液は濃青色です。ブラックライトで紫外線を照射すると,濃青色が消え溶液は透明になります。時間を置いてメタノールが蒸発して無くなった後も,青色に染まった酸化チタンは徐々に白色に変化します。酸化チタンが酸素(O2)に触れると,励起された電子によって酸素の還元が起こり,さらにプロトン(H+)を受け取ってヒドロペルオキシラジカル(HOO・)が生成すると考えられています。
O2 + e- + H+ → HOO・
ヒドロペルオキシラジカルは強力な酸化剤で,有機物をCO2とH2Oに分解してしまいます。
 メタノールが残っている間は,メチレンブルーの一部はメタノールの酸化で発生した吸着水素(H(a))で還元されて還元型となり,無色に変化します。還元型のメチレンブルーを空気中に放置すると,空気中の酸素で酸化されて元の酸化型にもどり,濃青色となります。

参考文献 大谷文章 著 イラスト・図解 光触媒のしくみがわかる本 技術評論社